「工事によるマンション耐震偽造 」
家の建て方 経験5-1
これはフィクションではありません。ドキュメントです。
「お前だけが設計屋じゃない」
建設業者は、私が事務所開設した時からの付合いで
この業者から設計監理を依頼される事もあります。
安心して建築工事を依頼しました。
しかし、偽造工事は行われていた。
検査時期になっても連絡が無い怪しい動きを
感じる時があったのです。
設計監理者である私は、工事進行条件を伝えた。
「各種検査終了後でない製品(鉄骨柱)は
現場搬入を認めない」
そして、検査の日。
そこには予想もしていない事態が
待ち受けていたのです。
打合せは、設計図に指定した
グレード工場で行われた。
しかし、検査は別の鉄骨会社に
連れていかれたのです。
この工場、指定したグレードではない。
下請です。
初期段階の検査を受けずに
設計耐力より、3割以上低い3階建共同住宅の
鉄骨柱は製作されていたのです。
参考
鉄骨会社は通常、建設会社の下請です。
鉄骨は、製作段階での検査が数回必要です。
私は、この検査は必ず行う。
設計図には
鉄骨工場グレードと検査内容が明記してある。
鉄骨業者には基準が設けられ
R・M・Hグレードに分かれています。
この偽造工事、四つの鉄骨会社が絡むという
とんでもない状況が発覚したのです。
鉄骨工事の流れはこうです。
建設業者
〔現場担当者はグレードを無確認で発注〕
↓
鉄骨会社(ノングレード)
〔指定グレードに依頼〕
↓
外注鉄骨会社(指定グレード)
〔利益追求のため下位グレードの下請に発注〕
↓
下請け鉄骨会社(下位グレード)。
要するに鉄骨製作は、ひ孫業者まで落ちていたのです。
監理者(私)が業者に与えた指示と条件。
製作場所は設計図に従うこと
新規材料にて再製作すること
検査合格後でなければ
現場への搬入を拒否する。
極上のものを作れと言っている訳ではない。
基準や条件を守り、建築業界の標準なもので
検査に合格すればよいのです。
私は、無理を指示しているつもりはありません。
二日後、建設会社の取締役から連絡があり
怒鳴りあいです。
「 お前だけが設計屋じゃない・・・ 」
設計監理者に責任を擦り付けようと考えた上
目をつぶれというのです。
家の建て方 経験5-2
「私は、負けない!」
どんな理由があろうと偽造工事は許せません。
前述のように私はこの時期、この業者から設計監理を
依頼される事がありました。
喧嘩をすれば仕事が無くなります。
しかし、私は覚悟を決めました。
「人が印を押せないものは私も押せない
指示に従わない場合は、建主に報告し、
しかるべき行動をとる」
この建設会社を信用していたのですが残念です。
結局は、多くの人間が関係する建築では
誰かが、金に目が眩み、どこかで冷静さを
失うことがある。
手抜き業者の片棒をかつぐ訳にはいかない。
私は、ペテン師ではない建築士なのです。
「私は、勝った」
鉄骨の溶接表面を見ると、外観はそれなりです。
肉眼では内部まで見ることが出来ません。
しかし、何かがおかしい。
私の経験からくる直感です。
私: 「溶接は基準通りですか。」
工場側: 「基準通りです。」
嘘だ。
日ごろ、監督だけではなく職人の
話をよく聞くよう心掛けています。
職人も、私と同じ建築技術者です。
一生懸命仕事をする職人は
自分の造ったものに自信があります。
話は正直なのです。
問題は、金が絡む経営者にあるのです。
私も監理業務には自信があります。
すかさず職人に聞いた。
職人の説明から、偽造工事が判明したのです。
3階建ての鉄骨柱12本は、鉄クズになり
新規鉄骨柱にて、無事完了しました。
しかし,業者はこの損金穴埋めのため
別の手抜きが予想されます。
手抜き工事を食い止めるために抜き打ちで
何度も現場に私は出向いたのです。
竣工まで監理に費やした時間は、予定の2倍以上です。
建主の目には見えない監理業務(見張る役)が
とても大切なことが分かって頂けたでしょうか。
よくいわれる言葉があります。
「設計屋さんは、背広を着て現場に来るだけで
何もしない。」
たしかに私は、作業服を着て現場で
作業をしている訳ではありません。
「見る、考える、見抜く」が監理者の業務です。
この事例
耐震偽造事件の前の出来事ですが
建築はいつも多額の工事費が絡んでいます。
現在でも安心してはいけません。
つい先日、この事例を
建築計画中のお客さんに伝えたところ
「最近、本物という人がいないのよねー」と言う。
よい言葉だと思います。
監理者は本物でなければならない。
ミハル(私)は、これからも設計監理者として
本物を目指して見張る役を頑張ります。
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経験5 おわり
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コメント
はじめまして。はかせです。
建築に対する厳しい目、私も賛同します。
先日Rグレードが極めて大きい店舗の施工になぜか関わっている会社を知りまして、社長に訊いてみると「一切不正は無い」と言い切っていました。しかし、実態はMグレードの名借りで覆面施工している実態が明るみになりました。この鉄骨屋は弁護士の力を借りて猛反発してきましたが。
何のためにグレードという概念があるのか。
業としている者は何を守らなければいけないのか。
利潤の追求に奔走し、モラルを忘れていると思います。
投稿: はかせ | 2008年10月22日 20:45